翻訳歴も十数年を過ぎますと、当時は原稿が宅急便で送られておりましたので、いただいたお仕事の原稿もどんどんたまってまいります。そのままほうっておくとダンボール数十箱にもおよび、そうなるとさすがに日々の空間も脅かされてきますので、いつまでも保存しておくわけにはまいりません。大半は廃棄いたしましたが、このような処分にあたっては常に最大限の注意を払っておりますのでご安心ください。(ゴミ回収車に投棄される瞬間まで確認しております)
これからお話することは、したがって、企業秘密に関わらない範囲のものにかぎられます。とりあげるのはすべて数十年以上も前のジョブばかりですので、その点でご迷惑をかけるようなことはないでしょう。
さて翻訳の仕事をはじめた当初、まず驚いたのは世の中には実に様々な種類の商品、仕事があるということです。なんといってもビジネスの世界のことですから、そうはいってもやはりその大半は堅い話になってしまいますが、当時は面白いものですと映画のシナリオの要約、ミュージカルのパンフレット(某劇団の大ヒットしたミュージカルです)、小説の切り抜き、新聞広告記事などもけっこうまわってきたものです。とにかく次にやってくる仕事はいつもまったく予測がつかないのです。
商品については少し例をあげるだけでも、そうですね、たとえばテニスの一人練習用の機械のマニュアルとか、本物の植物の葉っぱに手を触れたら電気がつく仕掛けになっているプランターとか、そしてまた1940年代の米軍の航空部隊用のジャケットの仕様書とか、ペイントタイプの白髪染めとか、それからまた公害汚染源を測定するインパクターとか、ウォーターベッドの黴防止剤とか、びんのふた締め機とか、いやもうその多彩なこと。ご縁があったいただいたのですから、どの商品にもそれなりの感慨がいまなお残されています。
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