某企業の定款で、とくに「ほう」と思ったのは遅刻に関する記述で、これが驚くほど細かい規定になっているのです。たとえば取締役会になんの連絡もなしに15分以上遅刻した場合にはその取締役は議決権を失う、というのがありました。このようなエグゼクティブが携帯電話をお持ちでなかったとは考えにくいのですが、なにしろこれは数十年も前の話ですから、お持ちでなかった可能性も十分あります。遅刻は誰でも嫌ですが、それでも多忙なエグゼクティブなら時には15分ぐらいの遅刻はせざるをえない状況だってあるのではないでしょうか。いくら秘書がいたとしても、そのときたまたまなにか不測の事態が発生したということだって十分考えられます。交渉が思いがけなく長引き、それでもあと一押し、その一押しで商談がまとまりそうだ、なんてときにはどうなさいます?
しかし定款ではこのあとにはさらにまた、30分以上の遅刻はたとえ連絡があったとしても認められない、と続くのです。
これはひょっとして遅刻の常習犯のような取締役がおられて、それに業を煮やした他の取締役の方々が、「絶対にこの項目を入れないとだめだ」と強く主張なさったのかもしれません。あるいはまたビジネスの厳しさがそのまま反映されているのかもしれません。いずれにしろ定款というものがかなり実際的な企業運営に関わったものであることがよくわかります。
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